眼球の断面図
左の方向から目に入ってきた光は、角膜と水晶体を通り屈折して、網膜に像が写し出されます。
近視のない正常な目
正常な目では、目に入ってきた光は、角膜と水晶体を通り屈折して、網膜に像が写し出されます。遠くにある木を見ると、網膜の上に逆さに写りますが、ピントははっきりしています。
近視の目
近視になると、眼球の前後径(眼軸)が伸びるために、遠くの気をみると網膜より前に像を結ぶためピントがぼけてしまいます。
近視が進行する要因
世界的に子供の近視がものすごく増加していますが、近視進行の要因として遺伝と環境が関与すると言われています。
遺伝的要因
- アジア人は他の人種に比べ、近視が多い。
- 子供が近視になりやすい確率は、片方の親が近視の場合は2倍、両親が近視の場合は5倍。
環境要因
- 近くを見る時間が⻑い。
- 屋外で過ごす時間が短い。
近視の進行を抑える方法
1)日常生活の注意でできること
- 日常生活で、勉強したり本を読む時は30cm以上の距離をとり、30分は続けないこと。
- 休憩時間は屋外で過ごすこと。
この2点が非常に大切です。台湾で行われた調査ですが、9〜12歳の学童15000人で、上の1、2を守った子供とそうでない子供を2年間追跡して調べたところ、それを守った子供はそうでない子供より近視進行速度が低いことが分かりました。
近視の進行度合い
2年間の経過、グラフが右下へ行くほど近視が進行
⻘線 | 視距離30cm以上 |
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赤線 | 視距離30cm未満 |
⻘線 | 近くを見る時間30分未満 |
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赤点線 | 近くを見る時間30分以上 |
⻘線 | 屋外で過ごす時間が多い |
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⻩点線 | 屋外で過ごす時間が少ない |
2)点眼薬による近視抑制
0.01%アトロピン点眼により、近視の進行を抑制することが分かっており、世界的にみて最も広く行われている治療です。
最初に効果が示されたのはシンガポールの研究で、0.01%アトロピン点眼を1日1回2年間使用したところ、近視進行が抑制され、その効果は点眼を行わない場合に比べて平均50%の抑制、さらに点眼を中止した後も効果が持続したとのことです。
しかし、近視が治るということではなく、点眼しない子供に比べ、進行が抑えられたということですし、人によって効果が異なります。
3)オルソケラトロジーによる近視抑制
近視は網膜の手前に焦点が合っている状態のため、ハードコンタクトレンズを睡眠時に装着して一時的に角膜の形状を平らにし、眼鏡やコンタクトなしで見えるようになります。レンズを外しても一定時間はその形状が続くので、睡眠時に装着し日中は裸眼で過ごすといったことが可能になります。これがオルソケラトロジーの原理です。
オルソケラトロジーは、装用により眼軸の延⻑が抑制される(通常の眼鏡やコンタクトレンズ比で平均30〜60%の抑制効果)ことが多くの研究により示されています。
4)多焦点ソフトコンタクトレンズによる近視抑制
多焦点ソフトコンタクトレンズによって、近視の進行が抑制されることが報告されています。効果はオルソケラトロジーと同程度と考えられています。
オルソケラトロジーと比べて刺激が少ないため装用しやすいこと。衛生面での管理が比較的容易なことから、今後はソフトコンタクトレンズが小児の近視抑制において中心的な役割を果たしていく可能性があります。